「インプラントって怖い治療なの？」

インプラントは外科治療を行いますから、怖い気持ちもわかります。どんな治療法なのか一緒に見ていきましょう。

インプラントとは、、

失った歯の下に金属の一部を埋め込み、その上に人工の歯をとりつける治療法が「インプラント歯科治療」です。新しい治療法のひとつと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが 1960 年代にはスウェーデンで臨床実験が行われて、日本でも 1980 年代には始まり、現在ではたくさんのメーカーで製造されており、技術も安全性も上がりました。

インプラントがブリッジや部分入れ歯と根本的に違うことがあります。それは周りの歯に負担をかけることなく自立することです。他の治療方法はどうしても周りの歯に負担をかけてしまいますが、インプラントは人工の歯根を植えるので単純に歯が 1 本増える形になります。なので自分の天然歯と同じように噛むことができます。周りの歯を傷つけることなく、装着後の違和感もないのがメリットでしょう。

とはいえ、すべての人がインプラント治療を選択できるわけではありません。たとえば、顎の骨の厚みや高さが足りない場合は簡単にはできません。歯を失ったとき、骨は歯を支える必要がなくなり自然と吸収され時間をかけてゆっくりと減っていきます。こうして骨が減ってしまうとインプラント治療に限らず、ブリッジや部分入れ歯などの治療もしづらくなってしまいます。ですから、歯を失った場合は放置せず、できるだけ早めに来院されることをお勧めします。

このように骨が足りない場合や歯周病がある方など、インプラント治療を行う前の下準備の治療があります。お口の環境を整えるこれらの治療のことを「前処置」といいます。
やせてしまった骨や薄い骨を増やすなど、足りない骨を作る前処置は再生治療と呼ばれ、非常に専門性の高い治療方法です。骨を増やす量、場所によっても難易度が変化しますので、事前に 3 次元の CT をとってもらい、歯科医から治療計画を聞くのがいいと思います。

また、インプラントはチタン製です。チタンはアレルギーを起こしにくい金属のひとつであり、医療業界でも信頼のおける金属として扱われています。ただし、リスクはゼロではありません。稀にアレルギーをお持ちの方がいらっしゃいます。その場合、ジルコニアのインプラントを用いることがあります。

インプラントは全身的な影響も受けます。喫煙者の方や糖尿病の方もインプラントの成功率が低くなる傾向があり、前者はできれば手術の前後 1 か月は禁煙を、後者の場合は内科の先生と連携しながら治療を検討する必要があります。また、顎の成長が終わっていない未成年の方もインプラント治療ができません。抗がん剤治療や放射線治療を行っている方も、不適応な場合があります。

インプラントは、まず骨にインプラント体を埋め込みます。これが顎の骨にしっかりと結合するのに大体１～４か月かかります。骨の自然治癒力に左右されるので個人差はありますが、治療の期間がかかることがインプラントの難点でしょう。

手術後の痛みや腫れにも手術の方法や個人差によるところがありますが、多くの方は１日ほど軽い痛みがある程度です。人工骨を足した場合は腫れが少し長引く傾向にあり、大体１週間程度です。みなさん初めてのときは非常に不安な顔をされますが、痛みのコントロールはしっかりとしますのでご安心ください。ただ、痛みが増す場合はすぐご相談、来院してください。

インプラント周囲炎

 

インプラントは人工の歯ですからむし歯にはなりません。しかし、ご自身の歯と同じように、歯石やプラークなどの汚れがたまることによって、歯周病になります（インプラント周囲炎）。インプラント周囲炎の怖いところは、ご自身の歯の歯周病と違ってぐらぐらせず、噛んでも痛くなったりしないことです。気づいたときにはインプラントをとらないといけなくなるぐらい進行していることがあります。ですのでインプラントを入れた方は毎日の歯磨きやフロスなどのケアに加え、定期的なメインテナンス、クリーニングが欠かせません。セルフケアがちゃんと行えているか、日頃うまく磨けているかなどのチェックも定期的に行いましょう。