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「プラーク(歯垢)がありますね」
歯医者でこんなふうに言われたことはありませんか?
そのときは「しっかり磨こう」と思っても、時間が経つとつい自己流の歯磨きに戻ってしまうことも多いかと思います。
ですが、実はこの“ちょっとした油断”が、将来のお口と体の健康に大きな影響を与えることがあるのです。
今回は、プラークを放置すると何が起こるのか?
その「先」にあるリスクと、今できる対策について詳しく解説します。
プラークとは?改めて基本を確認
プラークとは、細菌の塊です。
食べカスではなく、生きた細菌が唾液や食物残渣とともに作り出す、ネバネバした白っぽい膜で、歯の表面や歯と歯ぐきの境目に付着します。
このプラークの中では、数百種類もの細菌が活動しており、
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虫歯の原因菌(ミュータンス菌)
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歯周病の原因菌(ポルフィロモナス・ジンジバリス など)
が潜んでいます。
プラークはうがいでは落ちず、毎日の歯磨きと、定期的な歯科のクリーニングで除去する必要があります。
プラークを放置した結果、何が起こる?
それでは、プラークを除去せずに放置してしまうと、どんなトラブルが起こるのでしょうか?
時間の経過とともに進行する“負のスパイラル”をご紹介します。
1. 【数日〜数週間】 歯肉炎がはじまる
プラークがたまると、まずは歯ぐき(歯肉)に炎症が起こります。
主な症状:
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歯ぐきが赤く腫れる
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歯ブラシで出血する
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口臭が出てくる
これは歯肉炎と呼ばれる状態です。
まだこの段階であれば、適切なブラッシングで回復可能です。しかし放置すると…
2. 【数ヶ月〜数年】 歯周病へと進行
歯肉炎が治らないまま時間が経つと、歯周病(歯周炎)に進行します。
歯ぐきの炎症が深くまで進み、歯を支える骨(歯槽骨)まで溶けてしまう病気です。
歯周病の症状:
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歯ぐきが下がって歯が長く見える
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歯がグラグラしてくる
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噛むと痛い
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膿が出る、強い口臭がする
初期段階ではほとんど痛みがないため、気づいた時には進行していることが多いのが特徴です。
一度失われた歯槽骨は、基本的には自然には戻りません。
歯を支える力が弱くなると、最終的に歯が抜け落ちてしまうこともあるのです。
3. 【長期間の放置】 歯を失う、全身に影響が出る
プラークによって歯周病が進行すると、歯の喪失につながります。
歯を失うことで、次のような問題が発生します。
生活への影響:
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食べにくい、噛みにくい
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顔の輪郭が変わり老けて見える
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発音がしづらくなる
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栄養バランスが偏る
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自信をなくし、会話や笑顔を避けるようになる
さらに近年では、口腔内の細菌が全身に影響を与えることが多くの研究で明らかになっています。
プラークと全身疾患の関係
プラーク中の細菌が歯ぐきの血管から血流に入り込み、全身に悪影響を及ぼすことがわかってきました。
関連があるとされる病気:
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心疾患(心筋梗塞、動脈硬化)
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糖尿病(相互に悪影響)
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誤嚥性肺炎(高齢者に多い)
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早産・低体重児出産(妊婦さん)
つまり、プラークの放置は「お口の問題」だけにとどまらず、命に関わるリスクにもつながるのです。
プラークはいつから歯石になる?
プラークを放置すると、約48時間ほどで硬化し始め、数日で歯石へと変化します。
歯石になると、歯ブラシでは取れず、歯科医院での「スケーリング(専用の器具で除去)」が必要です。
しかも、歯石の表面はザラザラしているため、さらにプラークが付きやすくなり、悪循環に。
プラークをためないために今できること
ここまで読んで「プラークって怖い…」と思った方も多いはず。ですがご安心ください。
毎日の正しいケアと定期的なプロのサポートがあれば、プラークによる被害は防げます。
1. 正しい歯磨きを習慣に
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歯ブラシを歯と歯ぐきの境目に斜め45度に当て、小刻みに動かす(バス法)
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1日2回、最低でも3分以上磨く
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毛先の開いた歯ブラシはすぐに交換(1ヶ月目安)
2. 歯間清掃も忘れずに
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デンタルフロスや歯間ブラシを併用し、歯と歯の間のプラークを除去
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特に寝る前のフロス習慣が大きな予防効果をもたらします
3. 歯科医院での定期的なチェックとクリーニング
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3〜6ヶ月ごとの定期検診で、歯石の除去や虫歯・歯周病の早期発見
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専門的なブラッシング指導(TBI)で、自己流ケアを改善
まとめ:プラークは「沈黙のリスク」
プラークは、見た目では気づきにくい存在です。
痛みもなく、静かに進行するからこそ、「沈黙のリスク」とも言われています。
しかし、放置すれば、虫歯・歯周病・歯の喪失・全身疾患と、さまざまなトラブルへつながってしまいます。
逆に言えば、毎日のケアと定期的な歯科通院をきちんと行えば、これらのリスクは大きく減らせます。





