「虫歯にならないように歯を磨いているのに、また虫歯ができた…」

「子どもがよく虫歯になるけど、何がいけないの？」

「そもそも虫歯って、なんでできるの？」

こうしたお声を、私たちは日々の診療の中でよく耳にします。

虫歯（正式には「う蝕」）はとても身近な病気ですが、実は単純な原因で起きているわけではありません。

虫歯は、「複数の要素」が組み合わさって初めて発生する病気です。

この記事では、虫歯ができる原因を医学的にしっかりと解説し、ご自身やご家族の歯を虫歯から守るために必要な知識をお届けします。

---

虫歯とは？簡単に言うと「歯が溶ける病気」

虫歯は、細菌が作り出した酸によって歯が溶けてしまう病気です。

口の中にはたくさんの細菌が住んでいます。その中でも「ミュータンス菌」と呼ばれる虫歯の原因菌は、糖分をエサにして酸を作り出すという特徴があります。

この酸が歯の表面（エナメル質）を少しずつ溶かしていき、やがて穴が開いた状態が“虫歯”です。

---

 虫歯ができる「4つの原因」

虫歯の原因は1つではありません。

虫歯ができるには、以下の4つの条件がそろう必要があります。

---

① 細菌（虫歯菌＝ミュータンス菌）

まず第一に関わるのが、ミュータンス菌をはじめとする虫歯の原因菌です。

これらの細菌は、食べ物の糖分を分解して酸を作ります。

この酸が歯を溶かし、「脱灰（だっかい）」という現象を起こします。

💡ポイント：プラーク（歯垢）＝細菌の塊

歯にくっついている白いネバネバは、ただの食べかすではなく、細菌の集合体です。しっかり除去しなければ、虫歯のリスクはどんどん高まります。

---

② 糖分（特に砂糖）

虫歯菌は「糖分」をエネルギー源として活動します。

特にショ糖（スクロース）という砂糖を分解すると、酸を多く作り、ねばねばしたプラークを形成する力も強くなります。

甘いお菓子やジュースを摂る習慣がある人ほど、虫歯菌の活動が活発になりやすいのです。

💡注意：糖分の「量」より「頻度」

一度にたくさん甘いものを食べるよりも、少量でも頻繁に口にすると、口の中が長時間酸性になってしまい虫歯になりやすいのです。

---

③ 歯の質（歯の強さ・唾液の性質）

人によって歯の質は異なり、虫歯になりやすい歯・なりにくい歯があります。

また、唾液の量や性質も重要な要素です。

唾液は口の中を中性に戻し、酸を中和し、再石灰化（歯の修復）を促す役割を持っています。

💡 虫歯になりやすい条件：

• 生えたての歯（エナメル質が未成熟）

• 歯並びが悪く、磨き残しが多い

• 唾液の量が少ない（口呼吸・加齢・薬の副作用など）

---

④ 時間（酸にさらされる時間）

虫歯菌が糖分を分解して酸を作り、口の中が酸性になっている時間が長いほど、虫歯になりやすくなります。

酸性状態（pH5.5以下）が続くと、エナメル質はどんどん溶けていきます。

これが「脱灰」です。

💡 脱灰と再石灰化のバランスがカギ

食後、唾液が酸を中和して再石灰化を進めれば虫歯にはなりません。脱灰＞再石灰化になると、虫歯が進行します。

---

虫歯になりやすい人の特徴

虫歯の原因がわかったところで、次は虫歯リスクが高い人の特徴をご紹介します。

✅ 虫歯になりやすい習慣・傾向

• ダラダラ食べ・飲みをする

• 寝る前に甘い飲み物（ジュース・ミルクなど）を飲む

• 歯磨きの回数が少ない or 磨き方が甘い

• 歯並びが悪く、磨きにくい箇所がある

• 唾液が少ない（ドライマウス）

• 家族に虫歯が多い（菌の感染）

---

虫歯は「感染症」でもある

あまり知られていませんが、虫歯は感染症です。

特に乳幼児期に、保護者から子どもへ虫歯菌が感染する（母子感染）ケースが多いとされています。

口移しや同じ箸・スプーンの使用などで、ミュータンス菌が移るのです。

💡予防のためには：

• 大人の口腔ケアもしっかり行う

• 赤ちゃんには専用の食器を使う

• 食後に口をゆすぐ・ガーゼで口の中をふく習慣をつける

---

虫歯の進行段階と特徴

虫歯は以下のように段階的に進行していきます。

---

虫歯を防ぐために、今すぐできること

虫歯の原因を理解したら、次は「どう防ぐか」です。

以下の習慣を毎日の生活に取り入れることで、虫歯リスクは大きく下げられます。

---

◎ 歯磨きは1日2～3回、フロスも使う

• 食後や寝る前に丁寧なブラッシングを

• 歯間ブラシ・デンタルフロスを併用することで磨き残しが激減

---

◎ 甘いものは「だらだら摂取」をやめる

• ジュースやお菓子は「時間を決めて」摂取

• 水やお茶など糖分のない飲み物を習慣にする

---

◎ フッ素入り歯磨き粉や定期的なフッ素塗布を活用