
目次
- 保険診療と自由診療の違い
皆さんは歯科医院で治療を受ける際に「保険診療と自由診療」という言葉を聞いたことがあると思います。
ここでは、その違いをわかりやすく解説していきます。
保険診療とは
保険診療の歴史は古く、始まりは1961年ごろにさかのぼります。もう70年以上も続く制度です。
国が定めた基準に基づいて行われるため、どこの医院でも費用や内容に大きな差がないのが特徴です。
イメージとしては「給食」のようなもの。誰もが同じ内容を受けられる反面、メニューは決まっています。
保険診療の目的は、痛みを取り、噛める状態に戻す“最低限の治療”です。
自由診療=高額、ではなく「価値に見合った品質」
一方で自由診療とは、保険制度の枠に縛られず、より高品質な素材・技術・工程を用いた治療のことを指します。
医院ごとに考え方や技術レベルが異なるため、結果も大きく変わります。
イメージとしては「懐石料理やフレンチのフルコース」。同じ“食事”でも、食材・手間・仕上がりがまったく違うというイメージです。
具体的には、以下のような特徴があります。
- オーダーメイドの補綴物(1本1本の色味・形・噛み合わせを設計)
- 高精度な素材(ジルコニア/e-max/ラミネートベニアなど)
- 審美性と機能性を両立した設計・技工
- 最新機器による精密スキャンと設計
- 担当医制による個別対応と丁寧なカウンセリング
これらは単に「贅沢品」ではなく、再治療リスクの低減・長期的な安定性・自然で満足度の高い仕上がりといった、“未来の安心”につながる価値を持つ治療です。
保険治療(金属)と自由診療(セラミック)の具体的な違い
① 普段のお手入れの違い
保険治療では「銀歯」と呼ばれる金属合金が使われます。
一方、自由診療ではセラミックス(陶器の一種)が代表的な材料です。セラミックスは体になじみがよく、人工関節やお茶碗などにも使われるほど安全で長持ちします。
セラミックスは表面がツルツルしているため汚れが付きにくく、付いてもサッと落とせます。 金属の場合、使ううちに細かな傷ができて汚れが入り込みやすくなり、経年劣化が進みやすいのが欠点です。
② 精度の違い
保険治療では使える材料や工程が決まっており、精度には限界があります。私たちが限りのある材料を駆使して工夫をこらしても、残念ながらあまり長持ちにはつながりません。
自由診療では、精密な工程や高性能な材料を使用できるため、より歯にぴったりと合い、長持ちする仕上がりが可能です。
③ 装着(セット)方法の違い
金属の修復物は歯に化学的にくっつかないため、ボンドで“くっつける”ように装着します。 しかし、このボンドが劣化・剥がれると、そこから虫歯が再発することがあります。
よく「一度ちゃんと治療したのにどうしてまた虫歯になるの?」という質問をいただきますが、それはボンドが劣化し、細菌が侵入するからです。
一方、セラミックは歯と化学的に接着します。 歯とセラミックの両方を科学的に処理して接着させるため、歯と一体化し、より長期的に安定します。
④ 歯へのダメージの違い
金属は歯よりも硬いため、噛む力のバランスによっては歯の破折(割れ)を起こすことがあります。特に神経を抜いた歯は要注意です。抜歯となった原因のうち実に6分の1は歯の破折です(第3位)。金属やプラスチックは外れないように健康な歯を堀りこんでいかないといけません。結果的に治療前よりも歯が弱くなり、割れてしまうリスクが上がるからだと考えられます。
一方、セラミックは歯に近い硬さのため、歯を傷めにくく、自然な噛み心地が得られます。また、接着技術が使えるので結果的に歯を削る量が少なくて済み、長持ちしやすくなります。
まとめ ― 費用だけではない「本質的な違い」
保険診療と自由診療の違いは、単なる費用差ではなく、治療の目的・精度・持続性にあります。
私たちが大切にしているのは、「自由診療を勧めること」ではなく、ご自身の選択を理解してもらうことです。
どの材料にも特性と役割があり、患者さんの生活スタイルや希望に合わせて最適な選択を一緒に考えていければと思います。
番外編:保険で白い歯を入れる場合
保険でも白い樹脂(プラスチック)で修復できる場合があります。 ただしプラスチックは摩耗や変色が起こりやすく、長期的には劣化しやすい素材です。
また、最近登場した保険適応の「CAD/CAM冠」も、プラスチック系材料です。 見た目は白くても、耐久性や清掃性はセラミックとは異なります。
使用部位や目的を見極めれば良い選択肢にもなりますので、気になる方はお気軽にご相談ください。





