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「これまであまり気にならなかったのに、最近どうも食べ物が歯に挟まりやすい気がする」
「食後に毎回フロスを使わないと気持ち悪い…」
そんなふうに感じたことはありませんか?
一見、些細な違和感に思えるかもしれませんが、実は口の中で何かが起こっている“サイン”の可能性があるのです。
そしてこのサインを放置してしまうと、やがて歯を失うリスクや、全身の健康への影響へとつながるかもしれません。
この記事では、「歯と歯の間に物が詰まるようになってきた」という症状の原因や、対処法について詳しく解説します。
その詰まり、“一時的なこと”ではないかもしれません
私たちの歯は、ぴったりと隣り合っていることで「食べ物が詰まりにくい構造」になっています。
ところが、何かしらの異常が起こることで、その密着性が失われ、すき間が生じてしまうのです。
では、どんな原因が考えられるのでしょうか?
よくある原因①:歯と歯の間にできた“隠れむし歯”
「むし歯」というと、黒くなっていたり、しみたり、痛んだり…といったイメージがあるかもしれません。
しかし、歯と歯の間にできるむし歯は、気づきにくいことが非常に多いのです。
理由は簡単で、目で見えにくく、神経にも届きにくい位置にできるからです。
また、食べ物が詰まることでむし歯に直接刺激が届かず、痛みを感じないというケースもあります。
「気づいた時には大きな穴が空いていた」
「神経を取るしかないと言われた」
という方も珍しくありません。
このような“隠れむし歯”を見つけるには、定期的な歯科健診とレントゲン撮影が欠かせません。
よくある原因②:歯周病による歯ぐきの後退・歯の移動
もう一つ、非常に多いのが歯周病によって歯ぐきや骨が下がってしまい、歯と歯の間にすき間ができるパターンです。
歯周病は「痛みもなく静かに進行する」ことから、“サイレント・キラー”とも呼ばれています。
初期の段階では、自覚症状はほぼありません。
ですが、少しずつ歯を支える骨が溶かされ、歯と歯の間の密着性が弱まり、すき間ができてしまうのです。
また、歯が少しずつ“動く”ことで噛み合わせが変化し、これも詰まりやすさの原因となります。
よくある原因③:詰め物や被せ物の劣化・破損
以前に治療した歯がある方は、詰め物や被せ物(クラウン)の劣化も疑われます。
経年劣化で素材が欠けたり、わずかにズレたりするだけでも、歯と歯の間にすき間ができるため、食べ物が詰まりやすくなります。
中には、隙間から細菌が入り込んで詰め物の下でむし歯が進行しているケースもあります。
「もう治療したから大丈夫」と思っていても、10年、15年と経過していれば、再調整や交換が必要なタイミングかもしれません。
よくある原因④:加齢や歯の喪失による噛み合わせの変化
歯は“動かないもの”というイメージがありますが、実は少しずつ動いています。
特に、以下のような方は要注意です。
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加齢とともに噛み合わせが変わってきた
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過去に抜歯をしたまま放置している
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歯列矯正の後、保定装置(リテーナー)をつけていない
これらの要因でわずかな位置ズレが生じ、歯と歯の隙間が開くことで、食べ物が挟まりやすくなるのです。
食べ物が詰まりやすい人ほど、将来のリスクが高い?
実は、「食べ物が詰まりやすい」という人は、歯を失うリスクが高い層と重なっています。
その理由は以下の通りです。
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むし歯や歯周病が進行している可能性がある
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清掃性が悪くなり、さらに細菌が繁殖しやすくなる
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ものが詰まるたびにフロスや楊枝を強く使いすぎて、歯ぐきを傷つけてしまう
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噛み合わせのズレが悪化し、顎や筋肉にも影響する
このように、“詰まり”は単なる不快感にとどまらず、口全体の健康を脅かす問題に発展しかねません。
フロスや歯間ブラシだけでは解決できないことも
もちろん、日々のケアはとても大切です。
フロスや歯間ブラシを使うことで、詰まりをそのまま放置するよりは遥かに良い状態を保てます。
ただし、詰まりやすさの根本的な原因を解決しなければ、ずっと不快感を抱え続けることになります。
・むし歯が原因なら早めの治療が必要です
・歯周病ならクリーニングや歯ぐきの治療を進めましょう
・詰め物の不具合なら、再調整や再製作で改善します
・歯のズレが問題なら、矯正治療を提案されることもあります
つまり、セルフケアだけでは限界があるということ。
正確な診断と専門的な処置が不可欠です。
「歯並びが悪くなってきた気がする」も重要なサイン
食べ物が詰まる感覚とともに、「なんとなく歯並びが変わってきた気がする」という相談もよくあります。
歯の位置が変わるのは、歯周病によって支えが弱くなっているサインかもしれませんし、抜歯後に放置された影響や、噛み癖によるズレも関係します。
実は、歯科医師である私自身でさえ、自分の歯の変化にはなかなか気づけません。
定期的に歯科衛生士にチェックしてもらい、「あれ?ここ少し動いてますね」と指摘されることがあります。
だからこそ、プロの第三者の目が必要なのです。
まとめ:食べ物が詰まるのは、からだからのサインかもしれません
「最近、歯に物が詰まるな…」と感じているあなた。それは、単なる食べ物の“クセ”ではありません。
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むし歯
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歯周病
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詰め物の劣化
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噛み合わせや歯の動き
こうしたさまざまな要因が重なって起こる、お口とからだの異変のサインかもしれないのです。
早期に気づけば、治療は簡単に済むこともあります。
逆に、放置すればするほど悪化し、大きな処置が必要になったり、歯を失ってしまうリスクも…。
ぜひ一度、信頼できる歯科医院に相談して、本当の原因を見つけてもらってください。
予防と早期対策こそが、あなたの大切な歯を守るいちばんの近道です。