皆さんは「酸蝕歯（さんしょくし）」という言葉をご存じでしょうか？

虫歯や歯周病ほど広く知られてはいませんが、近年、酸蝕歯の患者さんは増加傾向にあります。

酸蝕歯とは、飲食物や胃酸などに含まれる「酸」によって歯の表面のエナメル質が溶けてしまう状態のことです。

放置すると、歯が薄くなったり、しみたり、見た目が変わってしまうだけでなく、将来的に歯が折れやすくなるリスクもあります。

今回は、酸蝕歯にならないための予防法を、歯科医の視点から分かりやすく解説します。

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酸蝕歯とは？

まずは酸蝕歯の原因について理解しておきましょう。

私たちの歯は、「エナメル質」という非常に硬い層に覆われていますが、このエナメル質はpH5.5以下の酸性環境に長時間さらされると溶けてしまう性質があります。

本来、唾液には酸を中和する働きがあるため、少量の酸が一時的に入っても大きな問題にはなりません。

しかし、酸性の飲食物を頻繁に摂取したり、胃酸が口の中に逆流したりするような生活習慣があると、エナメル質が徐々に削れてしまいます。

これが酸蝕歯の主なメカニズムです。

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酸蝕歯の主な原因

酸蝕歯の原因には以下のようなものがあります：

1. 飲食物に含まれる酸

• 炭酸飲料（コーラ、エナジードリンクなど）

• フルーツジュース（オレンジ、グレープフルーツなど）

• スポーツドリンク

• ワイン、ビール、酢の物など

これらの飲料や食品には強い酸が含まれており、頻繁に摂取することで酸蝕歯のリスクが高まります。

2. 胃酸の逆流

• 胃食道逆流症（GERD）

• 過度な飲酒や暴飲暴食

• 摂食障害（過食後の嘔吐など）

胃酸はpH1〜2という非常に強い酸性を持っているため、逆流して口の中に入ると、歯への影響が非常に大きくなります。

3. 過度な歯磨き

酸で柔らかくなった歯をすぐに強くブラッシングすることで、エナメル質が削れやすくなります。タイミングや方法にも注意が必要です。

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酸蝕歯の初期症状

酸蝕歯は進行が比較的ゆっくりで痛みも少ないため、気づきにくい特徴があります。

以下のようなサインに心当たりがあれば、一度歯科医院で相談してみましょう。

• 歯がしみる（知覚過敏）

• 歯の先端が透けて見える

• 歯の表面がツルツル、または凹凸がなくなる

• 歯の色が黄色っぽくなる（象牙質が透けるため）

• 詰め物の縁が目立ってくる

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酸蝕歯を予防する7つの習慣

1. 酸性の飲み物はストローで、短時間で飲む

炭酸飲料やジュースを飲むときはストローを使い、歯に直接当たらないようにすることが効果的です。

また、長時間ちびちび飲むのではなく、なるべく短時間で飲み切るようにしましょう。

2. 飲食後すぐの歯磨きを避ける

酸性の食べ物や飲み物を摂った直後の歯は柔らかくなっています。

この状態で歯を磨くと、エナメル質が削れてしまうことがあります。

食後30分ほど経ってから歯磨きするのが理想です。

3. キシリトールガムや水で口をすすぐ

食後にガムを噛むことで唾液の分泌が促進され、酸を中和する効果が期待できます。

また、水で口をすすぐだけでも口腔内の酸を減らす助けになります。

4. 就寝前の飲食は控える

寝ている間は唾液の分泌が減少し、酸の中和力が弱くなります。

夜遅くの飲食や酸性飲料の摂取は避けるようにしましょう。

5. 食事はバランス良く、カルシウムも意識

乳製品や大豆製品など、カルシウムを含む食品は歯の再石灰化を促すため、積極的に取り入れましょう。

6. 胃の不調は早めに受診

胃酸の逆流がある場合は、内科や消化器科での治療が重要です。

また、ストレスや生活習慣が原因のことも多いため、生活の見直しも必要です。

7. 定期的に歯科医院でチェック

酸蝕歯は初期には自覚症状が少ないため、定期的な歯科検診での早期発見がとても大切です。

フッ素塗布や、酸に強い歯磨き粉の提案なども受けられます。

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まとめ

酸蝕歯は、食習慣や生活スタイルによって知らず知らずのうちに進行してしまう疾患です。

特に「健康のため」と思って頻繁に飲んでいる果汁100％ジュースや酢のドリンクなどが、実は歯には大きなリスクとなっていることもあります。

しかし、ちょっとした工夫や予防策を取り入れることで、酸蝕歯のリスクは大きく下げることができます。

一番大切なのは、自分の口の中の状態を知り、正しいケアを習慣づけることです。

「酸蝕歯かも？」と気になった方は、早めに歯科医院でご相談ください。

歯は一生もの。日々の小さな意識が、将来の大きな健康につながります。